【岩手】相続した普通車の名義変更・売却・廃車の手続き

ご家族が亡くなられた後、残された普通車の名義変更や売却、廃車の手続きをどのように進めればよいか迷うことがあります。
相続した普通車は、車検証に記載されている所有者や車検の有効期間によって、事前に確認すべき事項が異なります。所有者が亡くなられた方のままでは売却も一時抹消登録もできないため、売却や廃車を選ぶ場合も、相続による移転登録を先に、または同時に申請します(解体済みの車の永久抹消登録を除く)。
この記事では、岩手県で自動車・バイクの登録手続きを専門とする行政書士が、岩手県内での手続きを前提として、判断の手順と必要書類を解説します。
この記事のポイント
- まず車検証で、所有者が亡くなられた方か、ローン会社などかを確認します
- 相続後は「相続人が使う」「売却する」「廃車にする」のいずれかを選び、それぞれ手続きが異なります
- 遺産分割協議書と遺言書のどちらを使うかによって、そろえる戸籍謄本等の範囲が変わります
- 車検が切れている場合は、移転登録だけを申請することはできず、抹消登録と同時に申請します
まず車検証で確認すること
最初に、車検証(または自動車検査証記録事項)を確認します。所有者欄がローン会社、信販会社、販売店などになっている場合、その車両は亡くなられた方の名義ではありません。
所有者欄が会社名義になっている場合は、ローンなどによる「所有権留保」となっている可能性があります。この場合は、相続による移転登録ではなく、通常の移転登録(名義変更)の手続きになります(東北運輸局「よくある質問」)。事前に所有者欄の会社へ連絡し、所有権解除や必要書類を確認してください。所有権解除の流れは、ローン完済後の所有権解除と名義変更の記事で解説しています。
重要な確認項目
- 車両の種類が「普通車」(自動車の種別が普通または小型)であること(軽自動車は手続き先が異なります。相続による軽自動車の名義変更の記事をご覧ください)
- 所有者欄が「亡くなられた方の名義」であること
- 使用者欄がどなたになっているか
- 使用の本拠の位置がどこになっているか
- 車検の有効期間が残っているか
- 現在のナンバープレートの地域名が「岩手」「盛岡」「平泉」のいずれであるか
ご注意ください
- 車検が切れている車は、相続による移転登録だけを申請することはできません。一時抹消登録と同時に申請するか、解体済みであれば永久抹消登録を申請します(国土交通省「自動車登録業務等実施要領」)
- 所有者欄がローン会社や販売店の場合は、相続の書類をそろえる前に、所有者の会社へ所有権解除の手順を問い合わせてください
相続後にどうするかで手続きが変わります
相続時の普通車の手続きは、「相続人が使う」「売却する」「使わずに廃車にする」の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
相続人が自分で使う
相続による移転登録(名義変更)を行います。
相続関係等書類の収集 → 名義変更 → 使用開始
売却する
一度相続人名義に変更してから売却するか、相続手続きと買主への名義変更を同時に行います。
相続手続き → 譲渡 → 買主へ名義変更
使わない・廃車にする
車両を手元に残す場合は一時抹消登録、解体済みであれば永久抹消登録の手続きを行います。
一時抹消登録 または 永久抹消登録
相続による名義変更の必要書類
相続人のうち1人が普通車を引き継いで使用する場合は、「相続による移転登録」を行います。
手続きには多くの書類が必要となります。特に戸籍謄本等は、遺産分割協議書と遺言書などのどちらを使うかによって、そろえる範囲が異なります。遺産分割協議書を使う場合は、被相続人(亡くなられた方)の死亡の事実と、相続人全員との関係がすべて分かる戸籍謄本等(原則として、出生から死亡までの連続した戸籍)が必要です。遺言書や遺産分割の調停調書・審判書などを使う場合は、死亡の事実が分かるもので足ります(国土交通省「自動車登録業務等実施要領」)。
戸籍謄本等に代えて、法務局で交付を受けた法定相続情報一覧図の写しを使うこともできます。また、遺産分割協議書など、他の相続人の協力が不可欠となる書類もあります。
事前に準備しておくもの(当日持参)
事前に準備し、当日持参する必要がある書類は次のとおりです。
| 必要書類 | 備考・詳細 |
|---|---|
| 車検証(自動車検査証) | 有効期間内のもの(抹消登録と同時に申請する場合を除く) |
| 戸籍謄本等 | 被相続人の死亡の事実と、相続関係が確認できるもの(法定相続情報一覧図の写しも可) |
| 遺産分割協議書等 | 相続人が複数いて、そのうち1人が引き継ぐ場合に必要(共同相続の場合は不要) |
| 印鑑証明書 | 新たに所有者となる方のもの(発行後3か月以内) |
| 実印 または 委任状 | 新たに所有者となる相続人が申請する場合は実印を持参。代理人が申請する場合は、その相続人の実印が押印された委任状 |
| 車庫証明書(自動車保管場所証明書) | 必要な場合のみ(証明日から40日以内のもの) |
新旧の使用者の使用の本拠の位置が変わらない場合などは、車庫証明書の添付が不要になることがあります。新しい所有者と使用者が異なる場合は、使用者の住所を証する書面(住民票など)も必要です。
当日、窓口で取得・作成するもの
当日に運輸支局などの窓口で用紙を受け取り、記入・提出するものは次のとおりです。
| 必要書類 | 備考・詳細 |
|---|---|
| 申請書(OCR第1号様式) | 運輸支局の窓口で取得して記入 (※事前にインターネットでダウンロード・印刷も可能) |
| 手数料納付書 | 運輸支局の窓口で取得。 手数料は1回の移転につき700円(支局の窓口で印紙を購入して貼付) |
| 自動車税申告書 | 運輸支局での名義変更手続き完了後、隣接する税申告窓口で取得して記入 |
登録の手数料は、令和8年4月1日に改定されました。改定の内容は、法定手数料の改定の記事にまとめています。
遺産分割協議書が必要かどうか
| 相続のケース | 必要な書類・対応 |
|---|---|
| 相続人が1人だけ | 通常、遺産分割協議書は不要です。ただし、相続人が1人のみであることを戸籍謄本等で確認します。 |
| 相続人が複数で1人が引き継ぐ | 遺産分割協議書を作成します。相続人全員の実印による押印が必要です。 |
| 車の価格が100万円以下 | 遺産分割協議成立申立書を使用できる場合があります。査定証や査定価格を確認できる資料の写し等を添付し、申請する相続人の実印を押印します。遺産分割協議を省略できるわけではなく、協議が成立した年月日と、申立書による申請に同意を得た年月日を記載します。 |
| 遺言書・裁判所書類がある | 公正証書遺言、検認済み遺言書、法務局の遺言書情報証明書、調停調書、審判書、判決謄本などがある場合は、遺産分割協議書なしで手続きが可能です(審判書・判決謄本は確定証明書付き)。 |
| 共同相続 | 相続人全員の共有名義にする場合です。相続関係が確認できる戸籍関係書類と、相続人全員分の印鑑証明書などを提出して手続きします。 |
未成年者が相続する場合
未成年者が相続する場合、追加で確認する書類は次のとおりです。
- 親権者全員の同意書
- 親権者が確認できる戸籍謄本等
- 親権者の印鑑証明書
- 未成年者本人の住民票または印鑑証明書
これらの書類の扱いは、事前に運輸支局へ問い合わせてください。
親権者と未成年者が双方とも相続人になっている場合は、利益相反となるため、遺産分割協議には家庭裁判所で選任された特別代理人の関与が必要になります(裁判所「特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)」)。
車庫証明・ナンバー変更・封印
車庫証明が必要な場合
普通車は、使用の本拠の位置が変わる場合、運輸支局での名義変更手続きの前に、保管場所を管轄する警察署での車庫証明の取得が必要になることがあります。岩手県内でも一部に対象外の地域(村など)があり、車庫証明不要地域一覧にまとめています。
申請に必要な書類等は次のとおりです。手順と書き方は、車庫証明の申請方法・必要書類・書き方で解説しています。
- 自動車保管場所証明申請書
- 保管場所の所在図・配置図
- 自認書または保管場所使用承諾証明書
- 手数料 2,550円(岩手県の場合)
ナンバー変更と封印
岩手県内であっても、使用の本拠の位置が変わることで、岩手ナンバー、盛岡ナンバー、平泉ナンバーの区分が変わることがあります(岩手県のナンバープレート管轄区域(市町村別)一覧)。
普通車は後部のナンバープレートに「封印」が施されているため、ナンバー変更時には運輸支局への車両の持ち込みが必要になります。持ち込みが困難な場合は、行政書士による「出張封印」を利用できる場合があります。
詳しくは、出張封印のご案内をご確認ください。出張封印の仕組みと注意点は、出張封印・丁種封印再々委託のメリット・デメリットの記事にまとめています。
売却する場合
相続した普通車を売却する場合は、一度相続人名義に変更してから買主へ引き渡すと、トラブルが少なく手順も分かりやすくなります。
相続人への移転登録と買主への移転登録を同時に申請する方法もあり、通称「ダブル移転」と呼ばれます。この場合は申請書を2枚提出し、移転登録の手数料は2件分の1,400円です(関東運輸局「第三者への名義変更」)。
廃車にする場合
普通車を廃車にする場合は、「一時抹消登録」と「永久抹消登録」の2種類があります。
一時抹消登録(ナンバー返納)
使う場面
長期間乗らない場合、自動車税を止めたい場合、または売却や解体前にいったん登録を抹消する場合に利用します。
亡くなられた方の名義のままでは一時抹消登録ができないため、相続による移転登録と一時抹消登録を同時に行います(一般に「移転抹消」と呼ばれます)。
この同時申請では、通常の名義変更で必要になる車庫証明書は不要です。車検が切れている車も、この同時申請の対象になります。
手数料は相続(移転登録)手続き700円+一時抹消登録500円の計1,200円です。当事務所の代行は、普通車・一時抹消登録代行のページでご案内しています。
永久抹消登録(解体済みの場合)
使う場面
一時抹消登録をしていない車両を、すでに解体済みの場合に利用します。一時抹消登録の後に解体した場合は、永久抹消登録ではなく解体届出を行います。
永久抹消登録は、相続人への名義変更を省略して、相続人のうち1人から直接申請できます。この場合は、被相続人の死亡の事実と申請する相続人との相続関係が分かる戸籍謄本等と、申請する相続人の印鑑証明書(発行後3か月以内)を添付します。
手続きの前に、引取業者から解体の連絡を受け、「解体報告記録日」と「移動報告番号」を確認しておく必要があります。永久抹消登録は、この連絡を受けた日から15日以内に申請します。
永久抹消登録の手数料は無料です。車検残存期間が1か月以上ある場合は、同時に自動車重量税の還付を申請できることがあります(国税庁「自動車重量税の廃車還付制度 Q&A」)。当事務所の代行は、普通車・永久抹消代行のページでご案内しています。
手続き前の最終チェックリスト
窓口へ向かう前に、次の項目のうち該当するものを確認してください。書類に不足があると、再度出向く必要が生じることがあります。
- 車検証の所有者欄が、間違いなく「亡くなられた方」の名義になっていること
- 車検が有効期間内であること(抹消登録と同時に申請する場合を除く)
- 被相続人の死亡の事実と相続関係が分かる戸籍謄本等(または法定相続情報一覧図の写し)が揃っていること
- 相続人が複数いる場合、どなたが車を相続するか合意が取れていること
- 遺産分割協議書等に、相続人全員の実印が鮮明に押印されていること
- 申請に使用する印鑑証明書が、発行から「3か月以内」のものであること
- 未成年者が相続人に含まれる場合、親権者の同意や特別代理人の手続きを確認していること
- 車庫証明の要否を確認し、必要な場合は警察署で取得済みであること
- ナンバー変更がある場合、運輸支局へ車両を持ち込める状態にあること
- 売却や廃車の場合、譲渡証明書、ナンバープレート前後2枚、リサイクル券などを確認していること
次のような場合は、事前に岩手運輸支局や専門の行政書士へ問い合わせることをおすすめします。
- 車検証の所有者がローン会社や販売店になっている
- 相続放棄をした相続人がいる
- 未成年者が相続人に含まれる
- 住所や氏名が、戸籍や車検証の記載とつながらない
まとめ:迷ったときは専門家への相談を
相続した普通車の手続きは、車検証の所有者と車検の有効期間を確認し、「使う」「売却する」「廃車にする」のいずれを選ぶかを決めてから進めます。
普通車の相続では、戸籍謄本等や相続人の書類の収集に時間がかかります。次のいずれかにあてはまる場合は、専門家への相談をおすすめします。
- 必要な戸籍謄本等がよく分からない
- 所有者がローン会社のままになっている(所有権解除が必要)
- 車検が切れている(一時抹消登録と同時の申請が必要)
- ナンバー変更が必要だが、車両の持ち込みが難しい(出張封印の利用)
相続人の人数や車両の状態によって、必要書類や先に確認すべき点が変わることがあります。
戸籍の収集方法、所有権解除、出張封印の要否などで迷う場合は、相続による名義変更の初期段階から専門家に確認しておくと安心です。当事務所の代行は、普通車・名義変更(相続)代行のページでご案内しています。
よくあるご質問
車検が切れている車でも、相続の手続きはできますか?
相続による移転登録だけを申請する場合は、有効期間内の車検証が必要です。ただし、一時抹消登録と同時に申請する場合は、車検が切れていても申請できます(国土交通省「自動車登録業務等実施要領」)。
一時抹消登録の後に再び公道で使用する場合は、検査を受けて新規登録を行います。新規登録の代行は、普通車・新規登録(中古車)代行のページでご案内しています。
戸籍謄本の代わりに、法定相続情報一覧図を使えますか?
法務局で交付を受けた法定相続情報一覧図の写しは、戸籍謄本等に代えて使用できます(国土交通省「自動車登録業務等実施要領」)。
相続人全員との関係を示す範囲が必要かどうかは、遺産分割協議書と遺言書などのどちらを使うかによって異なります。
相続人の中に未成年者がいる場合は、どうすればよいですか?
親権者と未成年の子がともに相続人として遺産分割協議を行う場合は、利益相反となるため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てます。同じ親権者のもとにいる未成年の子が2人以上いる場合も同様です(裁判所「特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)」)。
運輸支局で求められる書類の扱いは、事前に問い合わせてください。
解体済みの車の自動車重量税の還付は、誰が受けますか?
所有者が亡くなられている場合は、相続人が還付を受けることになり、還付申請は相続人名義で行います。複数の相続人が還付を受ける場合は、自動車重量税還付申請書の付表3を記載して提出します(国税庁「自動車重量税の廃車還付制度 Q&A」)。
車検残存期間が1か月未満の場合は、還付を受けることができません。
相続した車をすぐに売却する場合も、名義変更は必要ですか?
車検証の所有者が亡くなられた方のままでは、買主への移転登録を申請することはできません。
一度相続人名義に変更してから売却するか、相続による移転登録と買主への移転登録を同時に申請します(ダブル移転)。


