認証工場と指定工場の違いは?自動車整備工場の種類を解説

車検や修理の依頼先を調べていると、「認証工場」「指定工場(民間車検場)」という言葉を目にすることがあります。どちらも国の基準を満たした整備工場ですが、車検の際に運輸支局などへ車両を持ち込む必要があるかどうかという点で、大きな違いがあります。
この記事では、岩手県で自動車・バイクの登録手続きを専門とする行政書士が、認証工場と指定工場の違い、令和2年4月に始まった特定整備制度、整備工場に依頼する前に確認しておきたい点を解説します。
この記事のポイント
- 認証工場は、地方運輸局長の認証を受け、特定整備(分解整備・電子制御装置整備)を行うことができる工場です
- 指定工場は、認証工場のうち、検査設備や自動車検査員などの基準を満たして指定を受けた工場です
- 指定工場で車検を受けると、運輸支局などへの車両の持ち込み(提示)を省略できます
- 令和2年4月から、自動ブレーキのカメラ・レーダーの調整なども認証が必要な作業になりました
自動車整備工場の2つのタイプ
エンジンやブレーキなど、自動車の安全に直結する装置の整備(特定整備)を事業として行うには、道路運送車両法第78条第1項に基づき、地方運輸局長の認証を受けなければなりません。この認証を受けた工場が「認証工場」です。
さらに、認証工場のうち、自動車の検査設備や自動車検査員などの基準を満たした工場は、地方運輸局長から指定自動車整備事業の指定を受けることができます。これが「指定工場」です。指定工場は、いずれも認証工場の中から指定されています。
認証工場とは
認証工場とは、道路運送車両法第78条第1項に基づき、地方運輸局長から自動車特定整備事業の認証を受けた整備工場です。認証は、普通自動車・小型自動車・軽自動車といった事業の種類ごとに、事業場単位で受けます。
認証工場の主な特徴は以下の通りです。
- 特定整備を行うことができる
・認証を受けた範囲で、エンジンやブレーキなど安全に関わる装置の整備を行えます。 - 施設・人員の基準
・一定規模の作業場と作業機械を備え、特定整備に従事する従業員を2人以上置いています。また、1級または2級の自動車整備士の資格を持つ整備主任者を選任しています。 - 車検の流れ
・点検・整備を終えた車両を、工場が運輸支局など(軽自動車は軽自動車検査協会)へ持ち込み、検査を受けます。 - 標識の掲示
・認証工場であることを示す標識を、事業場の見やすい場所に掲げています(道路運送車両法第89条)。
指定工場とは
指定工場とは、認証工場のうち、さらに厳しい基準を満たし、道路運送車両法第94条の2第1項に基づき、地方運輸局長から「指定自動車整備事業」の指定を受けた整備工場です。一般には「民間車検場」とも呼ばれています。
指定工場の主な特徴は以下の通りです。
- 工場内で検査まで完結
・点検・整備の後、自社の検査設備を使い、自動車検査員が検査を行います。 - 設備・技術・管理組織
・認証工場の基準に加え、検査設備、自動車検査員の選任、管理組織について、より高い基準を満たしています。 - 保安基準適合証の交付
・保安基準に適合することを自動車検査員が証明した車両には、保安基準適合証が交付されます。これを運輸支局などに提出することで、車両の持ち込みを省略できます。 - 標識の掲示
・指定工場であることを示す標識を掲げています。
保安基準適合証の有効期間は、検査をした日から15日間です(指定自動車整備事業規則第9条第1項)。この期間内に継続検査の申請を行い、車検証の有効期間の更新を受けます。申請手続きは、多くの場合、指定工場側で行います。
保安基準適合証・保安基準適合標章の違いと有効期限はこちら>>
ご注意ください
- 指定工場で車検を受けても、継続検査の申請そのものは必要です。省略できるのは、運輸支局などへの車両の持ち込み(提示)です
- 指定工場で検査できるのは、その工場が指定を受けている自動車の種類(普通自動車・小型自動車・軽自動車)に限られます。たとえば、軽自動車だけが対象の指定工場では、普通自動車の保安基準適合証は交付できません
- 車体の寸法や乗車定員などが変わる改造をした場合は、運輸支局などに車両を提示して構造等変更検査を受ける必要があります
認証工場と指定工場の比較表
| 比較項目 | 認証工場 | 指定工場 |
|---|---|---|
| 根拠となる規定 | 道路運送車両法第78条第1項(認証) | 道路運送車両法第94条の2第1項(指定) |
| 車検時の持ち込み | 必要(工場が運輸支局などへ持ち込む) | 不要(保安基準適合証の提出で省略) |
| 設備・人員 | 作業場・作業機械、特定整備に従事する従業員、整備主任者 | 認証工場の基準に加え、検査設備、自動車検査員、管理組織 |
| 保安基準適合証 | 交付できない | 交付できる(検査日から15日間有効) |
特定整備とは?│令和2年4月から認証の対象が拡大
自動ブレーキや車線維持支援などの運転支援装置が普及し、その機能を保つには、カメラやレーダーの精密な調整が欠かせなくなりました。こうした背景から、改正道路運送車両法の施行により、令和2年4月1日から、認証の対象が広がりました。
- 分解整備(従来から認証の対象)
・原動機、動力伝達装置、走行装置、かじ取り装置、制動装置、緩衝装置、連結装置を取り外して行う整備・改造 - 電子制御装置整備(新たに認証の対象)
・自動ブレーキなどに使う前方監視用のカメラ・レーダーの取り外しや調整、センサーが取り付けられたフロントガラス・車体前部の取り外し、自動運行装置の整備・改造
この2つを合わせて「特定整備」といいます(道路運送車両法施行規則第3条)。「分解整備」という用語が廃止されたわけではなく、特定整備の一部として引き続き使われています。
認証は「分解整備のみ」「電子制御装置整備のみ」「その両方」のいずれかの範囲で受けるため、同じ認証工場でも、行える作業の範囲は工場によって異なります。なお、制度開始前から電子制御装置整備にあたる作業を行っていた事業者向けの経過措置は、令和6年3月31日で終了しています。
整備工場選びのポイント
車検や整備を依頼する前に、次の点を確認しておきましょう。
- 依頼する作業が認証の範囲に含まれているか
・フロントガラスの交換など、自動ブレーキのカメラやレーダーに関わる作業には、電子制御装置整備の認証が必要です。 - 車検の方法(認証工場か指定工場か)
・指定工場は自社で検査まで行えるため、車を預ける期間の見通しが立てやすい場合があります。 - 標識の掲示
・認証工場・指定工場であることを示す標識が、事業場に掲げられているかを確認します。 - 見積もりの内容
・点検・整備の範囲や費用に加え、追加整備が必要になった場合の連絡方法も、事前に確認しておくと安心です。
よくあるご質問
認証工場と指定工場では、どちらに車検を依頼するのがよいですか。
車検はどちらの工場でも受けられます。主な違いは、運輸支局などへ車両を持ち込む必要があるかどうかです。費用や車を預ける期間は工場ごとに異なるため、見積もりの段階で確認することをおすすめします。
指定工場に依頼すると、車検の期間は短くなりますか。
工場内で検査まで行える分、日程は調整しやすくなります。ただし、実際の期間は整備の内容や工場の予約状況によって異なります。
保安基準適合証の有効期間はどのくらいですか。
指定工場で検査をした日から15日間です(指定自動車整備事業規則第9条第1項)。この期間内に、継続検査の申請を行う必要があります。
オイル交換やタイヤ交換も、認証工場でなければ依頼できませんか。
エンジンオイルやタイヤの交換は特定整備にあたらないため、認証を受けていない店舗でも行えます。一方、エンジンやブレーキなどを取り外して行う整備や、自動ブレーキのカメラ・レーダーの調整は、認証を受けた工場に依頼する必要があります。
自動車整備士と自動車検査員は、どのように違いますか。
自動車整備士は、点検・整備を行うための国家資格です。自動車検査員は、指定工場で整備後の車両を検査し、保安基準に適合していることを証明する立場の人です。自動車検査員は、所定の要件を満たした者の中から指定工場が選任し、地方運輸局長に届け出ます。
まとめ

自動車整備工場には、地方運輸局長の認証を受けた「認証工場」と、そのうち指定を受けた「指定工場(民間車検場)」があります。車検における大きな違いは、運輸支局などへの車両の持ち込みが必要かどうかです。
また、令和2年4月からは、自動ブレーキなどのカメラ・レーダーの調整も、認証が必要な「特定整備」に含まれています。車検や修理を依頼する際は、工場の種類とあわせて、依頼する作業がその工場の認証の範囲に含まれているかを、事前に確認しておきましょう。
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▼法令はこちら
道路運送車両法第78条第1項
(認証)
第七十八条 自動車特定整備事業を経営しようとする者は、自動車特定整備事業の種類及び特定整備を行う事業場ごとに、地方運輸局長の認証を受けなければならない。
出典:e-Gov法令検索 (道路運送車両法)
道路運送車両法第94条の2第1項
(指定自動車整備事業の指定等)
第九十四条の二 地方運輸局長は、自動車特定整備事業者の申請により、自動車特定整備事業の認証を受けた事業場であつて、自動車の整備について前条第一項の国土交通省令で定める基準に適合する設備、技術及び管理組織を有するほか、国土交通省令で定める基準に適合する自動車の検査の設備を有し、かつ、確実に第九十四条の四第一項の自動車検査員を選任して第九十四条の五第一項の自動車の点検及び整備について検査をさせると認められるものについて、指定自動車整備事業の指定をすることができる。
出典:e-Gov法令検索 (道路運送車両法)
道路運送車両法第94条の5第1項・第6項・第11項
(保安基準適合証等)
第九十四条の五 指定自動車整備事業者は、自動車(検査対象外軽自動車及び小型特殊自動車を除く。)を国土交通省令で定める技術上の基準により点検し、当該自動車の保安基準に適合しなくなるおそれがある部分及び適合しない部分について必要な整備をした場合において、当該自動車が保安基準に適合する旨を自動車検査員が証明したときは、請求により、保安基準適合証及び保安基準適合標章(第十六条第一項の申請に基づく一時抹消登録を受けた自動車並びに第六十九条第四項の規定による自動車検査証返納証明書の交付を受けた検査対象軽自動車及び二輪の小型自動車にあつては、保安基準適合証)を依頼者に交付しなければならない。ただし、第六十三条第二項の規定により臨時検査を受けるべき自動車については、臨時検査を受けていなければ、これらを交付してはならない。
(略)
6 保安基準適合証及び保安基準適合標章には、国土交通省令で定めるところにより、有効期間を付さなければならない。
(略)
11 第一項の規定による自動車検査員の証明を受けた自動車が国土交通省令で定めるところにより当該証明に係る有効な保安基準適合標章を表示しているときは、第五十八条第一項及び第六十六条第一項の規定は、当該自動車について適用しない。
出典:e-Gov法令検索 (道路運送車両法)
指定自動車整備事業規則第9条第1項
(保安基準適合証等)
第九条 保安基準適合証及び保安基準適合標章の有効期間は、法第九十四条の五第四項の検査をした日から十五日間とする。
出典:e-Gov法令検索 (指定自動車整備事業規則)
道路運送車両法第58条第1項
(自動車の検査及び自動車検査証)
第五十八条 自動車(国土交通省令で定める軽自動車(以下「検査対象外軽自動車」という。)及び小型特殊自動車を除く。以下この章において同じ。)は、この章に定めるところにより、国土交通大臣の行う検査を受け、有効な自動車検査証の交付を受けているものでなければ、これを運行の用に供してはならない。
出典:e-Gov法令検索 (道路運送車両法)
道路運送車両法第66条第1項
(自動車検査証の備付け等)
第六十六条 自動車は、自動車検査証を備え付け、かつ、国土交通省令で定めるところにより検査標章を表示しなければ、運行の用に供してはならない。
出典:e-Gov法令検索 (道路運送車両法)



